事業承継税制をご存知でしょうか。これは、中小企業経営者が後継者に事業を承継する際の相続税を軽減するために作られた制度です。

 

この制度を利用するためには、事業承継を計画的に行わなければいけません。ここでは、事業承継税制を利用するための計画の立て方や手順、株式分散のリスクについて開設します。

 

■事業承継税制が生まれた背景

非上場の中小企業では、家族に加え10数人程度の従業員を雇い、ほそぼそと経営を続けている企業も少なくありません。モノづくり大国日本では、こういった中小企業がモノづくりにおいて大きな役割を担っていることも多く、中小企業の廃業は地域経済や国の経済に大きな打撃を与えてしまいます。

 

そんな中で、現経営者の死亡後に後継者が相続税を現金で支払えず、会社をたたむしかないという状況が起こらないよう作られたのがこの制度です。2018年3月末日までは、相続税のうち80%を猶予するという制度でしたが、2018年4月から要件が変更され、これまでよりも大幅に猶予されることとなりました。

 

■事業承継は計画的に行おう!

事業承継税制は2018年の税制改革によって、同年4月1日より要件および内容が大きく変更されました。2018年から計画的に事業承継を行う方は、10年間の特例措置を受けられるようになります。

 

・2018年からの変更点

2018年からは大幅に要件が緩和され、さまざまな部分で制度の変更がなされました。後継者はかならず一人でなければいけなかったものが2人、3人でも可能に、雇用確保要件も緩和され、税制適用が取り消されにくくなっています。

 

また、株式の贈与は先代経営者のみからしかできなかったものが、その他の株主からの株式も贈与できるようになっています。

 

もし業績悪化によって会社をたたむことになっても、猶予されていた相続税を全て支払う必要はありません。会社更生や民事再生が適用されてしまった場合には、支払わなければいけない相続税を減免してもらうことができます。

 

・適用要件

家族経営の中小企業が、親子間で事業承継を行っている場合に適用されると考えると簡単です。経営者が父と母の2人だった場合には、2人から事業を受け継ぐことができます。

 

・納税猶予

事業承継後、5年間に8割の雇用を維持していることで納税の猶予を受けることができます。以前までは80%の猶予でしたが、2018年から100%猶予されることになりました。

 

親から譲り受けた株式のすべてが税の対象とならないということです。

 

・株式の生前贈与について

事業承継税制では、相続税だけではなく生前贈与に関する贈与税についても優遇されるように定められています。現在の経営者から後継者に株式を生前贈与することで、要件を満たしていれば同じように100%贈与税が猶予されます。

 

・株式分散のリスク

ここで注意したいのが、株式を分散してしまう場合です。「後継者だけが株式(資産)を受け継ぐのはおかしい」と法定相続人が言い出してしまうことで、株式を分散し結果税制優遇が受けられず廃業に追い込まれてしまうこともあります。

 

こういったトラブルを避けるために、株式や事業の相続について法的な効力をもつ遺言書を作成し、残しておくべきです。また、他の法定相続人には預貯金を相続させるといった工夫も必要でしょう。

 

■事業承継の手順

最期に、事業承継を進める手順を簡単に紹介します。

 

・現状の把握

まずは事業承継計画を立案するため、現状を把握しましょう。ヒト、モノ、カネの流れを理解し、経営者自身の資産状況を把握、さらに後継者候補をリストアップしてください。

 

・後継者の確定

後継者が決まったら、各関係者へ通知し理解仰ぎましょう。株式や財産の行方についても明確化し、後継者の教育に貼ります。特に親族内で承継する場合には、法定相続人に対し、この税制の内容について理解してもらうための話し合いをもつことをおすすめします。

 

何も知らずに「そう決まったから」だけで理解できる人は殆どいません。特にお金に関することになると、必ずといっていいほど争いごとがおきます。自分の死後にトラブルが起こらないよう、事前に通知し家族内で話し合いを何度も行ってください。

 

・事業承継計画の作成

中長期の経営計画に加え、事業承継についても詳細が記載された計画書を作成します。事業承継の時期や承継に関する具体的な対策・施策を盛り込みましょう。

 

■まとめ

事業承継に関しては、素人だけで行うのは大変むずかしいでしょう。忙しい毎日の中で、経営に関する法律を正確に理解し、承継に関する税制の適用要件の理解、事業承継計画書の作成などをこなすのは思った以上の負担となるはずです。

 

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