自分の死後について考えた時、残された家族のために今できることは遺言書やエンディングノートを作成しておくことでしょう。遺言書とエンディングノート、どちらも同じようなイメージを持たれてしまいがちですが、この2つには明確な違いがあります。
今回は、遺言書とエンディングノートにはどのような違いがあるのか、さらにはどのように使い分けていけばいいのか紹介します。
■遺言書とエンディングノートの違い
遺言書とエンディングノート、この2つの最も大きな違いは「法的効力があるかどうか」です。遺言書は、要件に則って書くことで法的効力を持ち、残された家族はその遺言書通りにことを運ばなければいけません。
しかしエンディングノートには法的効力がないため、あくまでも故人からの「おねがい」どまりとなってしまいます。よって、遺産の分配方法や葬儀の方法など、「必ず叶えてほしいこと」を書くことはできません。
また、遺言書が法的効力を持つためにはさまざまな決まりを守ったり、法律家や公証役場の公証人が立ち会いのもと書いたりしなければいけません。しかしエンディングノートには決まった形式がなく、好きなノートを使って好きなように書き綴ることができます。
つまり、エンディングノートには「ああしてほしい、こうしてほしい」ということだけではなく、家族への手紙や思い出を綴っても問題ありません。写真を貼り付けてスクラップブック風にしてもいいでしょう。
■法的効力について
先程も触れましたが、法的効力を持つのは遺言書のみです。ただし、遺言書が法的効力を持つためには、いくつかの要件をクリアしなければいけません。
・法律家と一緒に遺言書を作る場合
しっかりとした遺言書を作成したい場合には、弁護士や司法書士に依頼するのがおすすめです。もちろん報酬を支払う必要はありますが、いざというときに「法的効力のない遺言書だった」というミスを避けることができます。
弁護士や司法書士に依頼した場合、公証役場で公証人立ち会いのもと遺言書を作成します。
法律家や公証役場に依頼するメリットは、遺産分配をより細かくできる点です。財産評価のしにくい不動産の分配についてもこと細かに行ってくれます。自分の財産を均等に分配したい、特定の家族に多く分配したいという場合には、弁護士や司法書士に依頼すると良いでしょう。
・自分だけで遺言書を作る場合
実は、遺言書は自分ひとりでも作成できます。この遺言書は「自筆証書遺言」と呼ばれ、いくつかの要件を満たさなければ法的効力を持ちません。自分だけで遺言書を作る場合には、かならず全ての文面が自筆であること、遺言書に押印すること、作成した年月日を記すことなど細かな要件が定められています。自分だけで遺言書を作るときには、財産を細かく分配するのは難しいでしょう。
自筆証書遺言の作成手順は以下の通りです。
・財産を全て洗い出す
・家系図を作る
・財産の分配方法・割合を決める
・間違えても良いようにてきとうな紙に下書きをする
・遺言書として用意した様式に清書する
・封筒に入れ保管する
作成した遺言書は、自分の死後に見てもらえるよう、信頼できる家族には遺言書の在りかを伝えておいてください。不安な方は、遺言書を弁護士に預けておくと良いかもしれません。
■使い分けの方法
このように、エンディングノートと遺言書には法的効力の有無という大きな違いがあります。この違いを加味し、エンディングノートと遺言書を使い分け、両方を書き残しておきましょう。
・遺言書の使い方
遺言書には、「自分の死後にかならず執行してほしいこと」を書き残すようにしましょう。遺言書で書き残しておけることの例を紹介します。
・相続分の指定、特別受益者の相続分お指定
・遺産の分割方法の指定、分割の禁止
・相続人の排除、排除の取消し
・遺留分の滅殺方法の指定
・遺贈、寄付について
・認知、後見人、後見監督人の指定
・遺言執行者の指定
など
遺言書を作成する際には、これらのことを意識してみましょう。相続させたくない人がいる、逆に相続させたい人がいる、婚外子がいる場合や養子がいる場合にも、遺言書があると安心です。
・エンディングノートの使い方
エンディングノートには、デジタル遺品に関するパスワードとIDを書いておいたり、葬儀に参列してほしい友人や親類の名前と連絡先を書いておいたりしておくと便利です。
エンディングノートには本当に好きなことを書くことができますので、死ぬまでに伝えられなかった気持ちを書き綴っても良いでしょう。もちろん、葬儀やお墓についての希望や、供養方法を書いても問題ありません。
さまざまなパスワードや暗証番号を書き記す際には、そのものずばりを書くのではなく家族にしかわからないこと、例えば娘や息子の誕生日にしてありますといったように書いておくようにしてください。なんでも書きすぎてしまうと、犯罪に巻き込まれた際に大変な事になってしまう可能性があります。
■まとめ
エンディングノートと遺言書には、法的効力の有無という違いがあることがわかりました。法的効力のある遺言書では相続の具体的な方法について、エンディングノートでは家族の生活に関わるようなことや、家族への手紙をしたためておくと良いでしょう。
エンディングノートにさまざまなことを書き綴っていくことで、これまで考えていなかった自分の死と深く向き合うことができます。
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